2010年1月18日 (月)

163. - 申請者の負担

7.(概要)IT戦略本部の報告書の項目に「添付書類の見直し(省略・電子化)」として,「申請者の負担
軽減という観点から,より一層添付書類の削減や電子化に取り組む必要がある。」とある点を踏まえた
骨子にすべきである。
- (意見)新改革戦略評価専門委員会や電子政府評価委員会が何をどう評価しているのか,疑問の
余地がないわけではないが,その報告書に「オンライン利用促進に向けた環境の整備」の項目に「添
付書類の見直し(省略・電子化)」として,「一部の手続きにおいて添付書類の省略等の取り組みが行
われていることは評価できるが,申請者の負担軽減という観点から,より一層添付書類の削減や電子
化に取り組む必要がある。特に行政機関が保有する情報を添付させるものについては,システム連携
の促進等によって,申請者の添付省略を進めるべきである。」と述べられていることをまったく考慮して
いない点は甚だ遺憾である。不動産登記申請だけ,他の申請とどれほど特別に考えているのか不明
であるが,登記の歴史を紐解き,まず日本や諸外国の登記制度をいちから見直すことや,すでに法務
総合研究所の「研究報告」http://www.moj.go.jp/HOUSO/houkoku/keisai-kiji/icdnewsno.17_2.pdf
「日本とドイツにおける不動産公示制度の研究」(大場浩之早大准教授の博士論文
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/28842/3/Honbun-4615.pdf)のような優れた
論文なども公表されているので今一度読み直すと,その中から「電子申請には電子申請なりの構造」
を再構築するために参考に出来ることもあるので,ぜひ添付の文献をお読みいただきたい。特に,元
来「登記済証は添付書類ではなかった」という新谷正夫先生の論稿(添付3)はもちろん,登記制度研
究における古典といわれる福島正夫先生や渡辺洋三先生の登記制度に関する著作や清水誠先生の
最近の論文「三度,市民法の劣化を憂える-不動産登記法の2004年改正について-」(渡辺洋三先
生追悼論集『日本社会と法律学-歴史,現状,展望』2009年3月10日日本評論社発行)(添付2)
は,国民にとっての登記制度の将来を見据えるものとして,必読である。

 御意見として承りました。
 なお,省庁間で情報を共有すること等により添付情報を省略することに
関する意見に対する考え方については,項番152のとおり。

162. - シールを貼って個人情報に配慮したふりの偽装制度

6.(概要)登記識別情報は,いわゆる個人情報であるが,実は登記識別情報通知書という書面に
シールを貼って個人情報に配慮したふりの偽装制度であって,自ら変更することも有効証明の自動化
もできず,憲法違反で廃止すべし。
- (意見)登記識別情報は,いわゆる個人情報であるが(先般の佐藤幸治元司法制度改革審議会会
長をはじめとする情報ネットワーク法学会の新保史生慶大准教授にご教示いただきました),その内
実は,登記識別情報通知書という「書面」にシールを貼って,個人情報に配慮したフリをしているだけ
である。一般の国民(個人)が,個人の情報を「個人情報として」オンライン利用することができず,登
記をするときには,司法書士や土地家屋調査士が代理して暗号化して提供しなければ,オンライン申
請できない状態は,「本人しか知り得ない情報であること」を前提にした登記識別情報制度が,本人以
外の司法書士が知って暗号化して提供してしまうことであって,個人情報保護法違反であり,まさに個
人の尊厳の発露であるところの「自己情報コントロール権」の侵害であり,憲法13条違反である。した
がって,これを起案して政省令を改正して個人情報コントロール権侵害をさらに強行した法務省や,こ
れを自己の免責特権として利用している法務局(登記官)は,憲法99条の憲法尊重擁護義務違反で
ある。したがって,この登記識別情報制度は,憲法13条及び99条違反により廃止しなければならな
いのであり,廃止しないこともまた,憲法違反である。
しかも,個人情報保護法上,失効申出制度は廃止や制限をすることはできないのであるから,そのた
め失効申出制度の存在に基づく取引障害は取り除くことができない。また有効証明の自動化について
も,登記官の「証明」責任の問題が絡み,システム上解決不可能であるため,先の「登識研」報告書で
問題点とされた論点は悉く改善できないことが判明している。従って,登記識別情報制度はこの点でも
不動産登記法1条違反なのであると同時に,個人情報保護法違反の問題を孕み,この問題を解決で
きないことは憲法違反の制度である。
一方,司法書士が,申請人本人であることをさまざまな情報を手がかりに確認し,それをもって登記申
請したことがわかれば,登記の真正(正確性)は確実に保たれる。現にそういう制度があるのであるか
ら,これらの制度を利用しやすいように,法改正すればよいのである。たとえば,本人確認情報制度の
規定が面談を必要としたり,細かすぎるせいもあるが,登記識別情報制度の補完手段にすぎないと規
定されてしまっていることが利用阻害要因となっている。すでに自民党PTでは,選択的手段だという
法務省の見解があるにもかかわらず法改正をしないから,この誤った利用が横行している。したがって
この無駄な登記識別情報制度をまず廃止すれば,登記識別情報制度にお金をかけることなく,同時に,
使いづらい本人確認報制度を改正すれば,新オンラインシステム改善は進むのである。

 登記識別情報制度において,登記の申請が完了したときに登記識別情
報の通知を受けるかどうかについては,申請人が選択することができるこ
ととされています。また,登記の申請を本人が行うか資格者代理人に依頼
するかどうかについても,申請人が選択することができるようになっていま
す。したがって,御意見にあるように登記識別情報制度が違法なもの,あ
るいは不合理なものであるとは考えておりません。
 なお,登記識別情報制度に関する意見に対する考え方については,項
番7のとおりです。

161.- 登記識別情報制度は国民に対する背信制度であり,存続すべき立法理由はもはやどこにもなく,これを廃止し

5.(概要)「登記識別情報を提供すべきときに提供しないまま登記完了した事件」等もあり,登記識別
情報制度は国民に対する背信制度であり,存続すべき立法理由はもはやどこにもなく,これを廃止し
た骨子案とすべきだ。
- (意見)①この事件は書面申請において複数件伝聞しており,ただちに原因究明すべきであるが,
現行の登記識別情報制度は,登記完了後に登記識別情報そのものを廃棄してしまうため,「照合した
かどうかの事実は,検証不能な制度」であるので,登記官のための免責要件として,官に都合の良い
ことばかりの不適切な制度といわざるをえない。従って,早晩,国民の登記制度利用において,甚だし
い損害を及ぼす可能性が非常に高く,不動産登記法1条の「目的」であるところの,「この法律は,不
動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることによ
り,国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資することを目的とする」の立法趣旨に反し
ており,直ちに廃止しなければならない。②また,電子申請のために,本人しか知りえない情報である
ことを以って,本人確認の制度根拠としていた登記識別情報制度は,半ライン別送方式(実質は書面
申請であって偽装オンライン)の導入により,制度矛盾になったのだから,これを廃止した新骨子案と
すべきである。すなわち,登記識別情報制度は,「本人しか知りえない情報であること」を根拠に,「本
人確認」のための制度としていたのにもかかわらず,目先のオンライン利用率を上げるために別送方
式の偽装オンライン制度を導入してしまい,第三者である代理人が暗号化して送信することになった
のであるから,もはや制度矛盾を生じている。これを「書面申請にも使える制度」だということは,詭弁
といわざるを得ない。なぜなら,別送方式による半ライン申請ならば,登記済証制度のままでよいの
で,登記識別情報制度を導入する必要はないからである。しかも,制度矛盾のまま政省令のみを改正
することは,法律違反である。したがって,このような制度根拠を失っている致命的な欠陥を孕む制度
は,直ちに廃止して,新オンラインシステムを構築し直さねばならない。

 御指摘のありました事案については,事実関係を確認し,その事実が認
められる場合には,登記所に対し,必要な指導を行ってまいります。
 なお,登記識別情報制度に関する意見に対する考え方については,項
番7,登記済証制度の復活に関する意見に対する考え方については,項
番10のとおりです。

160.- その都度,多額の税金を投入しても再発防止できないので,制度的にもシステム的にも存在理由がなく,これを廃止

4.(概要)登記識別情報制度は,今般の6・29事件のほか事件事故が多発して,その都度,多額の税
金を投入しても再発防止できないので,制度的にもシステム的にも存在理由がなく,これを廃止した骨
子案とすべきである。
- (意見)これまでも登記識別情報制度におけるさまざまな不具合は,当初から懸念されていたこと
であって,たとえば「不適当な登記識別情報への対応結果について(2006/9/8)」(法務省HP)
http://www.moj.go.jp/MINJI/oshirase2.pdf,「登記申請書作成支援ソフトウェアのパスワード不具合に
ついて(2007/10/10)」(法務省HP)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji139.pdf,ほか当局が公表してい
ないものでは,「登記識別情報が破けて見えない不具合事件」
http://www.eonet.ne.jp/~nnn2005/fu/fu-tsj-2.htmlがあったのに,「国民のための登記制度の発展」を
願う司法書士有志ら(http://www.cablenet.ne.jp/~tsj-haishi)の度重なる制度廃止提言(箴言)を,法務
省は無視しつづけ放置してきた。つまり,次のとおり
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ikenbox/h20/kaitou.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kongo/digital/pubcom/05.pdfでも分かると思うが,これらの箴言
を放置してきたことがそもそもの不具合の発生原因であり,人為的ミスと言わざるをえない(添付4)。
そして,今般6月29日の不具合発覚は,まさに対症療法でごまかし続けた結果であって行政の無謬
性によるものであり,根本治療を先送りにしてきた法務省の怠慢であり,行政の不作為であり,不動産
登記法制定時の附帯決議を忘れた立法機関(政治)の対応の甘さであると言わざるをえない。

 今後のオンライン登記申請の在り方を検討していく上での御意見として
承りました。

159.- 有効証明自動化や失効申出制度廃止の可能性など)をすべて解決できるか検証

3.(概要)6.30骨子案策定の前に,06年12月の「登記識別情報制度についての研究会」報告書で
指摘された問題点(有効証明自動化や失効申出制度廃止の可能性など)をすべて解決できるか検証
し,制度の存廃を決定すべきだ。
- (意見)いわゆる「登識研」報告書にもあるとおり,登記識別情報制度におけるさまざまな問題点
http://www.moj.go.jp/KANBOU/SHIKIBETSU/hokoku.pdf )は,制度発足当初から分かっていたこと
でありますが,いわゆる「登識研」の報告書の発表から「すでに2年半が経過」しても,改善を要求され
ているにもかかわらず,一向に手つかずで放置されている問題点がほとんどであります。もしこのまま
放置されたままですと,07年11月に日弁連が「1年以内の廃止意見」を表明
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/071122.html)したとおり国民の登記制度利用に支障
をきたすことは明白であります。にもかかわらず法務省は,それから一年半もの間,政省令の改正の
みを行い,付け焼刃のシステム改善を繰り返し税金の無駄遣いをして,問題の抜本的解決となる「法
改正を放置」してきた。その結果が,たびかさなる不具合の発生であり,今般の更なる不具合発覚で
あるから,この登記識別情報制度の不具合の「再発防止策は,もはや制度の廃止しかありえないこと
が判明した」のであります。よって,少なくとも登記識別情報制度の廃止を前提とした新システムの骨
子案をも策定すべきであります

 今後のオンライン登記申請の在り方を検討していく上での御意見として
承りました。
 なお,「登記識別情報制度についての研究会報告書」で指摘された問題
点についても,登記識別情報の有効性確認に加え,資格者代理人による
登記識別情報に関する代理請求(本人の委任状,電子署名(印鑑証明
書)が不要)の創設等の対応をとっており,その他の問題についても,そ
の必要性を応じ,引き続き対応をとることとしています。

158.- 自民PT資料に掲げられている,法務省としての施策事項の進捗状況と目途をきちんと公表すべきだ。

158 7 その他
2.(概要)6.30骨子案を策定する前に,まず自民党・登記オンラインPT(第6回・20年1月21日開
催)資料に掲げられている,法務省としての施策事項の進捗状況と目途をきちんと公表すべきだ。
-(意見)以下,「不動産登記オンライン申請利用促進のための緊急に講じる具体的な施策」(参照
http://www.shimazaki-net.jp/new/jimin-online-PT/PT6-moj-02.pdf)を現時点で私なりに,○・×・
△・?で評価してみると,
1 システム関係
△? ・民間の登記申請用ソフトウェア開発業者との連携
×? ・登記識別情報関係様式の入力簡易化のための機能の追加
×? ・オンライン物件検索を可能とするための機能の追加
× ・民間開発業者へのテスト環境の提供
× ・法務省が提供する登記申請書作成支援ソフトウェアの充実
× ・法務省オンライン申請システムの能力増強
× ・法務省ホームページの充実
2 法務本省の取組
○ ・不動産登記オンライン申請利用促進協議会(日本司法書士会連合会,日本土地家屋調査士会
連合会,日本弁護士連合会及び全国銀行協会)の開催
△ ・日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会に対する説明会の実施
?? ・全国銀行協会等金融機関関係団体主催研修会への参加
?? ・嘱託規定がある法人への改善策の説明,PR
?? ・法務局職員に対する説明会の実施
△? ・毎月の利用件数をホームページで公開
3 法務局の取組
?? ・司法書士会及び土地家屋調査士会に対する説明会の実施
?? ・金融機関に対する説明及び要請
?? ・地方公共団体に対する説明及び要請(オンライン嘱託の利用促進)
△??・利用者アンケートの実施
?? ・法務局通信ネットワークでの情報共有(職員間の情報共有(成功事例の紹介等))
×4 職員の取組
?? ・法務省職員による住基カード(公的個人認証)取得キャンペーンの実施
?? ・法務局職員の登記事項証明書(職員の物件)のオンライン請求運動の実施
?? ・法務局職員(自身の)の公的個人認証取得キャンペーンの実施
×5 その他
△? ・ポスター及びパンフレットの配布
以上のとおり,これらの論点についての達成状況に関する情報がどこに公開されているか不明である
ので軽々に評価できないにしても,実際の日々の利用者としての目から見ると,総じて,「やる気あん
のか!」と思わざるをえないほど,施策の達成度は,落第点であると評価せざるを得ないのでありま
す。

 今後のオンライン登記申請の在り方を検討していく上での御意見として
承りました。

5.- 仕様公開について

⑤そのほか,登記識別情報の提供方法が簡素化できればいいのか,簡単なWEB請求ができれば,
現「支援(してくれない)ソフト」は使わないと思うのだが,これを残す意味が不明であるとか?意見は
聞けど,法改正はしない(できない)のではないかとか?仕様公開して業務用ソフトとの連携を良くする
だけではなく,劇的に変えて欲しいけど,もう少し詳しい資料が出てこないと何を考えているのかよくわ
からないとか?疑問だらけである。このままでは「何べんいってもわかってくれないのだなあ」と思うば
かりであります。「今まで以上に仕様を公開します」という趣旨の骨子案ならば歓迎すべきだが,セキュ
リティを理由にこれまでどおり非公開にする部分があるのなら,いっそ司法書士や民間業務ソフトベン
ダーに開発を主導させるべきです。

 今後のオンライン登記申請の在り方を検討していく上での御意見として
承りました。

157.- オンラインからの登記識別情報ダウンロードの不具合」問題

④ 6月29日全国公表された「オンラインからの登記識別情報ダウンロードの不具合」問題
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/olshikibetsudl_index.html)については,いつごろ,誰から
(資格者団体か?)の情報提供によって判明したものか?その判明時期からどれくらいの期間を要し
て公表にいたったのか?公表時期として,意見募集の締め切り間際になったことは適切なものといえ
るのか?甚だ疑問であり,この点は詳細に明らかにすべきであります。

 本件事象の公表時期については,事案の調査状況に応じて速やかに公
表したものです。
 なお,情報提供者に関する情報を公表することはできません。

4.- 骨子案策定までの工程

③本件骨子案は,日司連や日調連,またソフト開発ベンダーの皆さんと打ち合わせたものですか?骨
子案策定までの工程(作業日程,策定参加委員,法的根拠)をお示しいただきたい。もし仮に,また現
オンラインシステムのように,法務省とシステム開発ゼネコンのみによって独断専行して策定したもの
だとすれば,ただちに白紙撤回すべきであります。なぜなら,そこには無尽蔵の「天下り税金還流癒着
体質」類似の構造が存在する疑いが垣間見られるからであります。

 骨子案については,平成20年2月に設置した不動産登記オンライン申
請利用促進協議会(日本司法書士会連合会,日本土地家屋調査司会連
合会,全国銀行協会,法務省民事局)やその分科会での議論,登記事項
証明書等の大口利用者に対するヒアリングや,ヘルプデスクに寄せられ
た御意見等を踏まえて策定したものです。
 また,骨子案策定後も,日本司法書士会連合会や日本土地家屋調査士
会連合会を始めいくつかの団体と打合せを行っております。また,ソフト
ウェア提供業者に対して説明会を行い意見交換を行っております(説明会
参照URL:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji185.html)。

3.- 「比較的利用頻度が高い利用者」とは誰のことを想定しているのですか

②骨子案文中「比較的利用頻度が高い利用者」とは誰のことを想定しているのですか?仮に,そのよ
うな利用者が存在するとすれば,法務省にとって,本骨子案を立案するにあたってどのような地位を占
めるものなのでしょうか?政策実行上,必要欠くべからざる存在と認識しているのか,違法な存在にも
かかわらず,やむをえず利用率向上のために,支援していただくために無視できないものと認識して
いるものなのか?その存在についてその利用状況を具体的にお示しいただきたい。

 「比較的利用頻度が高い利用者」(骨子案2(2))とは,司法書士又は土
地家屋調査士等の業務上オンラインを利用されている方々のうち,「日常
的に大量の登記申請を行う利用者」(骨子案2(3))以外の方々を念頭に
置いています。なお,骨子案(資料)2ページ目の図中,ヘビーユーザーの
上段が「比較的利用頻度が高い利用者」,下段が「日常的に大量の登記
申請を行う利用者」を指しています。