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2009年5月 1日 (金)

登記情報570号・判決速報についての疑問

編集部御中
冠省 編集後記にもあるように、上記判決速報(東京地裁H20.11.27
平成19年(ワ)12682号損害賠償請求事件)について、下記若干お伺いします。

1.この解説を書かれた方は、御社の編集部の方ですか?司法書士ですか?
 弁護士ですか?法務省関係者ですか?
  また、お名前を公表できますか?公表できれば、直接質問したいことがある
 ので、連絡をとることができますか?

2.本判決は、司法書士本人確認業務全般の問題であって、直接的に、本人
 確認「情報」提供の際の注意義務の問題ではないと思われます。
 この点で、少し意見を述べますので、もし、ご連絡を直接取ることができない
 のであれば、お伝えくださいますように、御願いします。
    
  結論として、「本人確認情報を提供する司法書士らが、その前提として、
 本人確認を行うに当たっては、一般的に高度の注意義務を課せられている」
 というのは、そのとおりではありますが、司法書士らは、本人確認においては、
 事前通知に代替しうるどころか、それ以上の通知義務を果たすべく、また
 実際に果たしていると考えます。
  事前通知は、単に郵便局を経て、登記所に戻ってくるだけのものであって、
 郵便局が免許証番号を控えるくらいだけのことで、登記官が実際に面談して
 本人確認しているわけではないからです。

  また本人確認情報の提供には、免許証のコピーを添付する義務はなく、コピー
 などなくても、本人と面談して、免許証等の番号を確認した記録などを記載して
 あればよく、その本質は、登記名義人本人と確認できたか否かであります。

  したがって、免許証を確認するしないとか、ケースから抜き取ってみるみないは、


 司法書士の本人確認における注意義務の問題であって、本人確認「情報」を提供
 する場合に限って、司法書士らに一般的に高度の注意義務が課せられている、
 ということを初めて判示したというのは、若干誤解があると思います。
  まして、読みようによっては、「本人確認情報を提供する際には、免許証ケース
 から抜き取ってコピーせよ」というような注意義務があるかのような安直な誤解
 を招く記述にも読み取れかねません。

  実際、本人確認情報を提供する際に、免許証をケースから抜き取ってコピーし
 たからといって、本人確認が充分でなく事故が起きた場合には、その過失を免れ
 るものでもなく、本人確認できていなかった司法書士の注意義務責任は問われる
 のです。
  この点で、この判決を、「本人確認情報を提供する司法書士の注意義務」特有
 の注意義務があるかのように括って、紹介されることには疑問があり、違和感を
 覚えております。

以上、2点お伺いいたしました。なお以下、補論しますので、ご検討ください。

3.本判決において、むしろ注目すべき点は、「本人確認情報を提供する際には、
 司法書士は、高度の注意義務が課せられ、しかも、これは登記義務者、登記
 権利者に対して、負うべき義務である。」としている点です。

  一般的に、司法書士は双方代理をしていますから、このように判示したものと
 思いますが、これが、登記義務者のみの代理人である司法書士の場合も、同様
 にいうことができるかどうか、問題になっております。
  登記の共同代理として、申請代理人になる以上、登記義務者のみの代理人で
 であるとしても、登記権利者のために本人確認情報を提供することになるわけで
 すから、この場合も高度の注意義務があるものと思われます。
  ただし、登記権利者にも司法書士がついていた場合には、この義務がまたどの
 ような構造になるのかは、分析の余地があります。

4.また、この判決文中、「保証書制度を廃止する代わりに」本人確認情報制度が
 創設されたかの記述がありますが、これはあきらかに間違った理解であって、
 保証書制度は、登記義務者を保証するだけのものであるのに対し、本人確認
 情報制度は、司法書士の本人確認業務が登記法に昇華した制度でありますから
 司法書士の職務に内在する業務の発露であり、事前通知や登記識別情報に
 代替する制度ではなく、選択的な制度であることは、最近の法務省の見解です。
 (自民党PT資料など。)
  この点で、保証書作成のように、作成料として10万円も請求していることこそ、

 逆に問題視されなければならないものと思います。本人確認業務はすでに、登記
 受任の際に、本件報酬においてすでにいただいているものであり、別個の作成
 費用としては、せいぜい1万円程度のものでなければ、暴利といわれかねない
 ものだからです。

以上、ご意見を賜れればありがたく存じます。