■「人間よ、一体お前はひとりで自惚(うぬぼ)れているほど賢いものなのか?」(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
ニュートンが万有引力の法則を樹立する200年も前のこと、ダ・ヴィンチは「重さは地球の中心に向かう」と記し、地質や古生物、解剖の分野でも後世の批判に堪えうる理論や業績を残した。1452年のきょう、フィレンツェ共和国(当時)に生まれた、この万能の天才はしかし、冒頭のようにかくも内省的なことばを残している(岩波文庫『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』から)。
そのダ・ヴィンチにとって絵画とは、自然を愛する心から生まれた「神の御身内」だった。また、神聖な創造の源泉となった「美」について、こんな考えをつづっている。「君は知らないのか、人間美のなかでもっとも美しい顔が見物人を引きとめるのであって、その豊富な装飾ではないことを? 君は粗野でまずしい布をまとった山の娘が飾りめかした女よりすぐれた美しさを身につけているのを見たことがないか?」
では『モナ・リザ』の微笑や『最後の晩餐』のドラマチックな群像の源とは何だろうか。彼の次のことばは、少なくとも筆者にとって、ひとつの答えである。
「人物を描くひとは、もしかれが対象になり切ることができないなら、これをつくりえない」
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090415/acd0904150351003-n1.htm